かざり錦 勉強会

6月10日、11日の両日、彩匠では6月恒例の勉強会を開催しました。

今年の内容は、「佐賀錦の生地を柄の形に切り取り、刺繍で縫い止めてゆく」かざり錦について学びました。

言葉で聞いた時、まず最初に思うのは・・・「えッ!佐賀錦ってあれでしょ?草履やバッグ、帯地だよね。ちょっと派手目のオレンジ色。 その佐賀錦で作った着物って・・・ そもそもあの生地で着物って作れるの?」 でしょうか(笑) ちなみに、これは正直私の最初の感想です。 多分賛同して下さる方多いと思います。

そもそも佐賀錦の生地自体、織る事が大変難しく、今では織り手もかなり減って、厳しい状況だと聞いています。 縦糸に箔糸を使い横糸に染色した絹糸を使う。 箔糸って・・・和紙ですよ!! そもそも長い縦糸をどうやって箔糸で作るのか!なんならそこから気になるのが佐賀錦です。 

実はかざり錦に出会ったのは、2年も前の事。 いくら話を聞いても解らないので、実物を持って、担当者が教室に来てくれました。 一目見て、その美しさに圧倒されました。 そして、私の知っている佐賀錦の作品とは、全く違うものでした! そして、2年越しでこの勉強会に向かう時、今度は私が生徒さんに向けて作る「案内」に苦慮したんです。 

佐賀錦を切り抜いて、パッチワーク・・・いやパッチワークとは違う、キリバミか? いや、キリバミとも違うような・・・ 困った私は担当者に助けを求めました。 超簡単に言えば「佐賀錦の生地を、柄の形に切り抜き、刺繍によって縫い留めてゆく」 ただ2年前の作品から、私自身「刺繍」のイメージがわかなくて、疑問を持ちつつの、再会になりました。

再会した作品、何とも言えない美しさと上品さ。 これは何も変わることなく圧倒されました。 が、疑問に思っていた「刺繍」 これは「駒糸を切り抜いた佐賀錦の生地の端に、綺麗に一本だけ添わせ、生地と駒糸を縫い止めてゆく」究極の駒刺繍。金の駒糸を使えば「金駒刺繍」ってやつでした!!

って言うか、金駒刺繍だね。と言っていた、振袖や訪問着に施されている刺繍の技法を初めて目の前で見る事が出来ました。まあ普通は駒糸が何本か並んでいて、それが花弁になっていたりするんですよね。

切り抜いた生地の丸みや角、どんなに鋭角でも、きちんと添って、きちんと縫い止められていないと、折角の柄もメリハリのないぼんやりしたものになってしまいます。 小島先生は「これは誰でも練習すれば出来るようになるのよ」とおっしゃっていましたが、

生地を切り抜くだけでも、「線の内と外では最終狂いが出ますよね?」「そうね、それは困るわね」

「針を出すのはどれくらいの場所?」「1ミリは大きいから0.5位ですかね」

「なんで駒糸を時々動かすんですか?」「これはカーブや、角にきちんと駒糸を添わせる為に、向きを変えたり、撚りを少しだけかけたりするのよ」

はい、死ぬほど必死で練習すれば、なんとか出来るようになる日は来るかもしれません・・・いつとは言えませんが!

そんな技術をしゃべりながら、惜しげもなく見せてくれる小島さん。皆もかぶりつきで必死です(笑) 

ふっと気付いたんです。 このデザインは誰が作るのだろう?古典でありつつ、モダンさがある。 何とも言えない色の重ねには、愛らしさと気品がある。 「デザインは誰が?」「デザインは全てうちの社長(ご主人)が、柄から色だしまで一人でします」

でた、やっぱり男性だ! そして聞いて驚いたのがその年齢。 なんと83歳!! なんとみずみずしい感性なんだろう・・・腰が抜けそうになりました。 

そして更に、これまたとっても美しく、手のかけられている着物地や帯地だったのですが、なんとその出来あがってきた生地を見てから、柄や色目を作り出すそうなんです。 一体どうやったらそんな事出来るんでしょう。

「どうやって色柄を決めるんですか?」誰かが聞きました。 「なんかね、ふっとおりてくるって言うんですよね。私にはわかりませんけど。」 出た!! 前にも聞いたことがある言葉です。 モノ作りを極める「職人」の口から時々聞く言葉。

これは持って生まれたセンス、感性だと思うんです。 凡人がどれだけ努力しても、決してまねできない(泣) ただし本当に凄い職人は、更に「色気を失ってはモノ作りは出来ない。特に呉服は大半が女性が着るものなんだから」という言葉に表れるように、自分の感性を磨き続ける事を怠らない。 だから凄いものが出来る。 

何だか無駄をそぎ落としきった、美しい作品達だったと思います。 そしてそして、着る人を間違いなく作品が選ぶ。 こんなに当てる人によって、着物や帯の見え方が変わる物、今までに出会った事がありませんでした。

素晴らしい作品達、これも担当者が2年かけて段取りし続けけてくれたからこその量でした。 それらの作品に囲まれ、惜しげもなく自分の技術を目の前で繰り返し繰り返し見せていただき、解るまで丁寧に教えていただいた、本当に幸せな時間を過ごす事が出来ました。 担当者にも、小島さんにも本当に感謝です。ありがとうございました。

11月には工房にお邪魔する予定です。 今回見れたのは、沢山ある工程の本の僅かな部分、工房にお邪魔すれば、もっと多くの技術を、工程を自分の目で見る事が出来ます。 更には素晴らしい職人さん(ご主人)にもお会いできる・・・めっちゃ楽しみですね。