恒例 秋の京都日帰り旅行

12月19日(木曜日)

寒くなったり、突然暖かい日があったりと・・・12月も半ばなのに何とも変な気候です。が、風邪やインフルエンザは流行中とか、皆さまお気をつけ下さいませ。

今年も去る11月14日と15日の二日間に分け、更に、一日のメンバーを半分に分けて、日帰り京都旅行に行ってまいりました。 今年は京都観光は「東福寺」さんへ。機場見学は「まこと」さんへお邪魔してきました。 (と言っても、東福寺さんへは、生徒さん達だけで行ってもらい、私と学院長はずっとまことさんにいましたが(笑)

「東福寺」さんは言わずと知れた京都の有名なお寺さん。紅葉の美しい事!!テレビの宣伝でもよ~~~く使われているので、大混雑!!を予想していたのですが・・・今年は紅葉が少し遅れたせいか、覚悟していた程の人出ではなかったらしく、写真も撮れたし、東福寺さん満喫できたようです。 撮れた写真を送っていただいたので・・・

前日の夜から、初日の朝方までは、結構な雨降りで、ちょっと心配しましたが、さすが「晴れ女」の集団です。 当日は二日間とも、暑くも寒くもない、いいお天気でしたね。

14日の木曜日は9人の方が参加して下さいました。四人と五人にわかれ、午前中は4名が「まこと」さんへ、5名が東福寺へと向かいました。参加人数が多いので、車を三台出していただきましたが、乗り切れず、一台はタクシーで!(笑) 午前中にまことさんに向かった4名は、彩匠では若者グループでした(笑)優しく温かい、まことさんの社長さんや、奥様に迎え入れていただき、まず応接間へ。皆の緊張して、後ろに下がる事(笑) まあ仕方ないんですが・・・ 

「まこと」さんは、「すくい」の技術や「よろけ」の技術を開発、特許を持っておられます。

そう、綴れ織りの人間国宝であった、「細見華岳」 さんとご家族で親交のあったまことの先代。細見さん自身から、「綴れは硬くて締めにくいところがある、それらの弱点を克服する織り物の組織が考えられないか?」と相談を受けられたそうです。 そして・・・綴れの組織も生かしつつ、その組織を変化させた「すくい織りの組織」を考えだされました。何でも出来上がったものを見れば、なるほど!と思います。が、一から考え出す。これは凄い事です。ものすごい事だと思うんです。 織りの組織なんて、昔から伝えられてきたものが沢山あります。その中で、新しい組織。そして今ある素晴らしい組織の弱点を克服する組織を考え出す!! 今はもうおられない、まことの先代さんにお会いしたかったなあ~。とつくづく思いました。 だって、一つだけじゃないんです。 「すくい」だけではなく「よろけ」という組織も考えだされている! 見ればなるほど! そうだよね。そうすればこの組織が出来る! わかるんですよ。でも・・・考え出すなんて! 勿論、知識や知恵、経験を沢山お持ちだったのだろうと思いますが、(なんかエラそうで、すみません!)頭の柔らかさ、柔軟さが無ければ無理です。

そして、モノづくりには欠かせないのが、その技術を駆使する「職人さん」です。 いくら頭で考えても、実際に織って形にする職人さんの技術が無ければ完成しない。形にならない。形にならなければ、単なる「机上の空論」になってしまう。まことさんには、いらっしゃるんですよね・・・ 初めて出会いました。 様々な組織を自由自在に操り、まるで絵を描くかのように、帯を織りあげてゆく職人さん。 普通、職人さんは一つの組織を織る事に特化します。その一つの技術を、突き詰めておる事自体、それ自体も本当に凄い事なんです!

なのに、まことの職人さんは、図柄を見て、大体の色の打ち合わせをしたら、後はその職人さんの感性で織りあげてゆきます。色だけでなく、様々な組織をその時の感覚で組み合わせて織ってゆく。組織が変われば、同じ縦糸と横糸なのに、色も雰囲気も奥行きや広がりさえもどんどん変わってゆきます。 まるでえがいているように、織っていかれます。職人でありつつアーティスト、デザイナー・・・鳥肌が立つどころではありません!! 生徒さん一人一人がその凄さを感じて帰って欲しい!!心底そう思いました。

 大きな機場で、様々な芸術品と呼ばれるモノを織ってきた職人さんが「よろけ」の機に座っておられました。「縁があってここに来たんだけれど、よろけの機は簡単には織れなかった。難しいんじゃ!機織りは戦いなんだぞ!」と教えていただきました。でも、機を扱う手元は優しく、温かい・・・西陣では超ベテランの域に達していた職人さんでさえ、最初は苦労した、特許を取っている技術。それを身につけ、作品を生み出すのが、どんなに大変な事なのか、心底伝わってきました。

まことさんのモノづくりのお話と組織の話を、社長さんにしていただき、いざ機場へ! 正直話だけでは、組織は理解できません。若いメンバー、初日の朝のメンバーは特にそうだったと思います。 笑顔でごまかし、職人さんのもとへ!「何でも聞いて下さいね。」本当はめちゃめちゃお仕事邪魔してるんですけど、職人さんは温かい。「知って欲しい!!」という思いがガンガン伝わってきます。が、いかんせん「何を聞いたらいいのかすら解らない。」と言うのが正直な思いだったと思います。(笑) そう、最初は皆そうなんです。だからこそ勉強しなくてはいけません。かくいう私も15年程前は、彼女たちと同じでした。 沢山のモノを見て、学ぶ。ご迷惑と解っていながら、機場へお邪魔させていただくのは、現場に身を置く事でしか得られないものが沢山あるからです。 そうして感じ見て学んだ事は、机の上で学んだ事と結びつき、本当の知識になり、一生忘れる事はありません。

職人さんの手元を見ていると、だんだん疑問がわいてきます。 こういう時、わかったふりは損です。「初歩的な事で申し訳ないのですが・・・」という前置きをして、次から次にわいてくる疑問を聞いていましたね。まことの職人さんが凄いのは、初心者にも、わかりやすく砕いて、丁寧にお話して下さいます。(あ~ これぞまさにホンモノです!)  そして、少しでも理解すると・・・生徒の顔が変わります!「先生めちゃめちゃ凄いって事ですよね!!」 ハイ!今貴女が感じた何十倍も、何百倍も凄いんです(笑) でも、この積み重ねが本当に大事です。 職人さんの技術、本当に凄い方は、いとも簡単にやっているように見えます。で、「まあいつもやってますから。」とか大変そうには言われません。(大変そうにやってるのは・・・私の経験上ホンモノではありません(笑))特許の機の写真は勿論NGです。写真の枚数は少ないですが、本当に充実した時間でしたね。 時間が来て、食事に向かわなければならないものの、こんなに後ろ髪を引かれるものでしょうか(笑)

東福寺の散策組とも合流して、お昼御飯は、食通のお取引先が、予約して下さった、「FUJI屋京色」さんでした。美味しいものをお腹いっぱい食べて欲しい!!店主の思いがひしひしと伝わってきます。お昼から、10品もいただいてしまいましたね。素材から、調理味付け、盛り付け全てに心のこもったお料理でした。料理人も職人ですものね! 「お腹がはちきれそうう!」なんて言いながらも、美味しいから食べれちゃいます(笑) お酒のリストも充実!! 「ここは機会があれば是非、夜にも来たいよね~!」って声も聞かれましたね。 本当です。夜来たい!!着物を着てたら食べられない???誰がそんな事言ったんでしょうね(笑)ちゃんと食べれますよ~!!

大満足の食事を終えて、朝とはメンバーを入れ替えて、まことさんに向かいます。「お腹が苦しい。」とか「眠くなってきた。」とか散々言いながらも・・・社長さんにお迎えいただくと、皆の顔が引き締まります(笑) 朝のメンバーよりも、少し経験のある生徒さん達は、最初の社長さんの話から、食いついていましたね。そして、そこに置かれていた作品も、ちゃんとチェックしてましたね(笑)

こうしてみると、さすがに経験者は、機と機の間へ入り込む姿も、朝とは違いますね。 より職人さんの近くへ、職人さんの手元を食い入るように見ています。 自分の持っている頭の中の知識と、目の前で動いている職人さんの手元・・・つなげようと必死な姿です。 笑い話も盛り込みつつ、様々な疑問を聞いていましたね! 職人さんも楽しそうです。そうなんです。「職人気質」なんて言葉があるように、本来職人さんは無口な方が多い。そりゃあ喋っていては仕事になりません。でも、少しでも職人さんの技術について知っていたり、知りたいとの熱意が伝わると、職人さんて、本当に沢山の貴重なお話を、惜しげもなく話して下さいます。 職人さんでなくては解らない事が、てんこ盛り! 本当に宝物です。あっという間に過ぎてしまう時間。 ここにいくらでもいられる・・・ずっとここに居たい・・・そんな思いを引きずりながら、一日目終了です。 お腹も心も頭も満タンな一日でしたね!!

二日目15日の金曜日は7名の参加者の皆さんでした。 昨日同様、京都駅で、三名と四名の二組にわかれます。 「じゃあ、お昼にね~!」と言いながら(笑)

二日目の朝組は、彩匠では、中堅どころの皆さんでしたね。 まことさんに着く前から、ワクワクしている様子が伝わってきます。 すました顔して、お部屋に迎えていただくも、そこに陳列してある作品に、目は釘付けになっていましたね。 「柄ってどっから取るんですか?」とか、質問も出たりして、社長さんは最近の柄選びの大変さも、詳しくお話して下さいました。

この組は一番人数も少なく、長いお付き合いで、お互いをよく知っている方同士だったせいもあったとは思いますが、なんせ正直! 正直さや素直さって、何かを学ぼうとする時、本当に大切です。 そう、「すいません、どうしても、綴れとすくいの違いがわかりません。」「なんとなくわかる気もするのですが・・・腑に落ちないんです。」 と職人さんに訴えたんです。 その言葉に応えて、職人さんがみせて下さったのが、すぐ上の写真です。

 縦糸を見えないように、横糸でくるむのが綴れ織り。綴れの場合、横糸の色しか見えません。この写真の場合横糸はこげ茶です。それにひきかえすくい織りは、縦糸と横糸の本数のバランスを自由に変える(だからジャガードが必要)ことで、横糸の色と、縦糸の色が混ざって見えてくる。本数のバランスを変えて織る事で、縦糸と横糸の二色であっても自在に色を変える事が出来る。そして、使う糸の太さがそれぞれ違う。綴れは太目の糸を用いますが、すくいは細い糸を束ねて使います。 

写真では織りあがった状態ですが、実際に説明を聞きながら、目の前で織って見せていただくと・・・そりゃあ一目瞭然です!! 三人から歓声が上がったのは言うまでもありません。私自身も改めて、その組織を考え出した先代の凄さ、さらっとやってのける職人さんに本当に驚きました。 この三人はいや、私や学院長を含め一生忘れる事のない光景だと思います。 本当に感謝です! そして、変なプライドを持たず、恥ずかしがらず、正直に聞いてくれた生徒さんにも感謝します。 まさに「百聞は一見にしかず」でしたね。

二日目も勿論集合して、皆で「FYJI屋京色」さんでお食事をいただきました。 前日に娘さんが参加された方は、しっかり情報が入っていて、「朝食少なめで来ました!」とか「帯緩めに締めてきました。」など、しっかり準備出来てましたん(笑) 一日目と同様、大満足なお食事に「先生、安すぎじゃあないですか?」「お店大丈夫ですか?」と心配の声まで上がっていましたね。 御主人とお出かけされる方もいらっしゃるので、「夜のメニュー気になる!!」と聞いていた方も(笑) 単品よりコースの方が、断然お得らしいですよ。

さて、最後の組は、4名ですが・・・内2名は彩匠では超ベテラン。 もともと熱心なお二人なので、豊富な知識と経験を持ち合わせていますし、本当に豊富に生きた知識を持っています。で、一緒の2名は約一年前から彩匠お稽古を始めたお二人。 着付けはもとより、知識も経験も彩匠では新人さんです。 が、あえてこの四人にしたんですよね~。 知識は人に説明出来て初めて本物だと思うんです。 解っているつもり、知っているつもりでいても、相手が理解できるよう説明できないなら・・・「つもり」でしかない。 彩匠ではベテランさんは偉そうには一切しませんが、新人さんが解っていないかも?と感じたら、さりげなく言葉を足して、理解を助けてくれます。 お互いとっても役に立つ(笑)

そりゃあベテラン勢は食いつきます。 まことさんの会社の建物そのものから食いついてましたね(笑) 作品にも、社長さんのお話にも向きあう姿が半端ない!! 話に花が咲くのを何とかとどめて、機場へゴー!!です。

偶然でしょうか?いえ、多分必然だと思います。 ちゃんと、ベテランさんと、新人さんがペアーになって、機と機の間にいます。 そして、ベテランさんならではの質問、モノの見方をしていました。機を下から覗きこんでいましたね。その様子に新人さんもつられて覗きこんでいましたが・・・ 何を見たらいいのか解らない!? そっとベテランさんがアドバイスしていましたね。 ベテランさんの質問はやはり高度です。 それは職人さんが一番わかる事。本当に嬉しそうに、沢山話して下さいました。 

そして、そんな様子を見ていた私。不意に、ここに来るのは、今回これで最後なんだと思ったら、なんだかとっても寂しく悲しい気分に襲われました。今まで、数々の機場へお邪魔してきたんですが・・・こんなに気持ちになったのは、初めてでした。涙が出そうになって、自分が一番驚いた。 職人さんの技術の素晴らしさと、作品に込める思い、熱意、情熱、そして愛情。とっても居心地がよくて、神聖な場所。 馬鹿げた話ではありますが、「自分が機織りの修業をするならまことさんがいい」と心底思いました。 なんでしょうね・・・自分でもよくわかりませんが、本当にそう思ったんです!!(実は今でも思っている(笑))

これから機織りの勉強をしたい。と心底思っている方がおられれば、私は間違いなく、まことさんをお勧めします!!

さて、最後に少しだけ取る事の出来た、彩匠らしい写真をどうぞ! ハイ、皆でワイワイ作品を見て、当てて楽しんでいるところです(笑) 今回新たな魅力を開花させた方が、沢山いましたね~!! 写真撮れなかった皆、ごめんよ~

二日間本当に得るものの多い旅行だったと思います。 しっかり学ぶ為とはいえ、二日間合計4回も、お付き合い下さった、まことの皆さま、社長さんをはじめ、奥さまや社員さん、そして職人さん。彩匠の為に、仕事の内容までずらして、少しでも解りやすいように、考えて下さった事、本当に本当に感謝しています。お土産までいただき、一人一人心に刻まれた時間だったと思います。 学んだ事を、周囲の方々にもお話できるよう、一人一人が宣伝塔になれるよう頑張っていきたいと思います。 本当にありがとうございました。 寂しくなった私に「 いつでも来て下さい。大歓迎ですよ。」と温かい声をかけて下さった奥様のお言葉に甘えて、又是非伺いたいと思います!! 今回間に入って、まことさんを紹介していただき、食事の手配から、車での送迎まで、めいっぱい助けていただいたOさん、本当にありがとうございました。感謝しています。 そして、いつも彩匠の為に陰になり日向になり支えて下さるK先生。今回は落ち着くところのない、東福寺への送り迎え、食事場所へ、お店へ、臨機応変に対応して下さり、ありがとうございました。お陰さまで、目の前の事に集中して、時間を過ごす事が出来ました。 いつも本当にありがとうございます。 生徒さんをはじめ多くの方に恵まれている彩匠。今回もつくづく感じる事が出来ました。 本当に沢山の宝物。ありがとうございました。