秋の夜長の観賞会 2018年

10月18日(木曜日)

ここのところ、気持ちのいい秋晴れが続いて・・・それだけで得した気持ちになる(単純!)でも、風邪気味の方が結構いらっしゃるようで、夏の疲れと、日中と朝晩の温度差のせいでしょうか?くれぐれもご自愛くださいね。

さてさて秋と言えば彩匠では毎年恒例「秋の夜長の観賞会」、教室を飛び出て、倉敷美観地区内にある「新渓園さん」での年に一度、それも16時から20時までの行事ですが・・・内容は濃い!! 岡山にいてはなかなか目にすることの出来ないお宝を、数時間だけお借りして、展示勉強する会です。 今年も見ごたえがありました!

「真実に美しい物は 常に新しい」・・・創業当時からの変わらぬ信条

今年は、彩匠学院長にとってもあこがれであった、「洛風林」さんの作品を間近でゆっくり鑑賞させていただきました!!

洛風林さんは、帯地制作に必要な機(はた)を持たず、その制作の全てを創業者「堀江武氏」の制作理念の元に集まっていた、西陣の機屋に委託する、という形態をとっています。 「洛風林同人」と呼ばれたその方々は、世界中の美術工芸品、民芸品、宗教美術品等に、直接触れることにより、革新的な美意識や美的な感性が培われました。それ故に、着物業界には無かった、斬新であり、大胆であり、繊細であり、革新美と伝統美を見事に融合させた独自の作品が生み出されました。 更に、共に学び続けた事により、それぞれの機屋が、固有の得意技術をいかした様々な作品制作をしながらも、「洛風林らしさ」がある作品が生み出されたのです。

今は、三人の姉妹が洛風林をしっかり受け継いでおられます。三人姉妹とお会いするたびに、「三本の矢」のお話を思い出すのは、私だけでしょうか?

会場は例年通り「新渓園」です。会場もなかなか希望通りに取るのが難しくなってきて・・・ちょっと苦労しています。

まあ、これだ立派な建物ですし、50畳の広さと日本庭園のお庭・・・夜にはライトアップもしていただけて・・・感謝です!!

さて、今年の会場のしつらえは・・・前日の山から採ってきた植物達が今年は元気で助かりました(笑) 今年はアケビ豊作でした!

カメラマンさん、もう少し勉強してもらわないと・・・見附の写真はないし、撮って欲しい角度から撮れてないので残念です。

さて、開場予定時間16時前からチラホラと生徒さんがやってきました。皆本当に楽しみにしていてくれたんだなあ・・・と思います。

10月8日のこの日は、本当に暑かったんです! 振り返れば今年の暑い日の最終日だったかも!? 数日前涼しい日が続いたので、「単衣じゃなく、今年は迷うことなく袷を用意しました。」と言う声を聞いていたんですが・・・暑かった、単衣でも暑かったですね~

でも、皆着物を着て参加です。それぞれがこの日の為にコーディネートも考えて、綺麗に着て来てくれました。お洒落着だからこそ、よりそれぞれの個性が光る着こなしを見れるのは、嬉しい事ですね! 久しぶりの再会に声を上げる輪があり、展示作品に食いついて、説明が始まる前から質問してる人あり、互いのコーディネートで盛り上がる輪があり・・・皆が笑顔で自由なこの感じ・・・安心します!

今回は恵まれた事に、社長の麗子さんと、三女の愛子さんが来て下さいました。

麗子社長は、ほぼ全ての帯の色だしをしておられるとか、愛子さんは若くても、とても優れた柄出しをされます・・・私達凡人の感性とは全く違うという事を、ひしひしと感じさせられますが・・・とても たおやかで美しいお二人。 自分で着物を着るから、女性だから出せる色柄があるんだろうと思います。 三代目で又洛風林さんの作品には新たな風が吹きこまれ、更により魅力ある作品になってゆくと、思わずにはいられません。 ご本人たちは大変でしょうけれども・・・

17時になり、勉強の時間の始まりです。 一同先程までとは違い、引き締まった顔つきで座ります。 何だかうちの生徒さんは、女性同士の方がテレがあるのか、少し遠い(笑)

帯の制作工程、技術について学び、更に洛風林の真髄、柄の元になった資料等、パネルを使って、現物と見比べて学びます。 こんなものが図案の元に! この図案からどうしたらこの柄になるのか??? 驚きと感嘆の声が漏れます。 そして、配色が変わる事で、こんなに違う物になるのか!驚きの連続でしたね。 洛風林の洛風林たるゆえん・・・美的感覚、美意識の凄さを目の当たりにしました。

そして、数点。本当に今回洛風林さんの御好意で、大切な資料を持ってきていただきました。 世界各国で先代たちが、それぞれの美意識の元に集めてきた物です。 宗教的な物もあり、願いが込められた物もあります。 いかに大切に保存されてきたのか一目で解ります。

中でも印象的だったものは・・・当然海外のもので、古いものですが、お嫁入りが決まると、親戚一同が思いを込めて刺繍をする。一枚の大きな布に皆で刺繍することもあれば、それぞれが刺繍した布を持ち寄りつなぎ合わせる事もあるそうです。が、統一がとれていて、とても美しい・・・ 娘さんはその布を持ってお嫁入りする、ベットカバーにしたり、日常の中で大切に使われる。 その布から柄を出して帯を作り上げた二代目社長(現社長のお父様)はその帯を奥様(現社長のお母様)にプレゼントされたそうです。

なんか、ホロッとしませんか? お嫁に行く親戚の娘の為に一針一針刺繍をする。そこには当然様々な思い出や願い、祈りがある事は容易に想像出来ます。 そして遠く離れた日本に来たその布から柄出しをした帯を、自分の奥さんにプレゼントする・・・ これが洛風林の美意識であり、人に伝わるものなんだと思いました。 その帯は・・・温かいんですよ~!! 今までも、作品に込められた作者の思いは、語らなくても間違いなく届く。そんな経験をしてきた私には、納得のお話でした。皆ジーンとしてましたね。

胸がいっぱいになったところで、お腹が空いてる事に気付きます(笑)

今年も美味しい「さくら弁当」さんのお弁当です。 毎年メール一通で、配達までしてもらって・・・さくら弁当さんも、うんとお忙しくなられたのですが・・・気持ちよく、毎年工夫を凝らし、この会の為に作って下さいます! この皆で食べるお弁当も、この会の楽しみの一つに間違いないですね!

そして・・・お弁当を食べ終わると、あっと言う間に机と座布団は片付けられ、皆の楽しみにしている時間の始まりです!

ワイワイとお目当ての帯を見て触り、当ててみる・・・彩匠メンバー至福の時ですね。 「手触りが違う。」「軽い。」「古典柄がこんなモダンになるの!?」「良く似合うけど・・・私は?」「私も私も!!」もう大騒ぎです。 皆本当に好きなんだなあ~!とつくづく感じます。「この柄の元はなんだろう?」聞いてびっくり「経典の入れ物の柄!?」なんて声も飛び交ってましたね。 そして最後に、帯屋さんの作った着物・・・「塩繭」について学びました。 誰かなあ~「一つ賢くなりました。塩釜ですよね!」って言ったのは(笑)

塩釜は料理、「塩繭」ですよ~!!!

最後の最後まで楽しく驚きのある会でした。 洛風林の皆様本当に本当にありがとうございました。 沢山無理なお願をして、めちゃめちゃ暑い中なんとお礼を言えばいいのか・・・ 本当に感謝しております。 準備を手伝ってくれた蔭山先生、前日の山入りでは、妙にテンションが上がり、気が付けばイバラの刺で血だらけ・・・あれはやり過ぎです!が、非常に助かりました。感謝します。カメラマンさんも、私的に負担が軽くなって助かっています、あがとうね。 そして参加して下さった生徒さん、暑い中着物姿で参加して下さり、本当にありがとうございました。 皆の「感じる心、学ぶ意欲」があるからこそ、続けて行けます。ありがとね。 今年も30名弱の皆で、幸せな時間をご一緒出来た事に感謝します。