長野県上田市・上田紬職人の元へ!!

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9月2日(月曜日)

さあ、夏休みも終わりいよいよ季節は秋へ・・・  出来るなら気温も過ごしやすくなって欲しいものです。雨はもういいですね・・・

実は、8月のお盆明け17,18日の一泊二日で長野県上田市まで行ってきました。総勢9名。10人乗りの大きな車をかりて、早朝5時に教室を出発! 渋滞は??との不安と戦いつつ、7時間~8時間の移動でした。 いつもですが、運転手の蔭山先生有難うございます。 そう、別に運転手じゃあありません。 世界でたった一人のスゲの技術をお持ちの草履の職人さんですが・・・ 彩匠の行事ではいつも一番しんどい部分をかって出てくれます。 先生がいてくださるので、あちらこちらに出かけられます。感謝してます。ハイ!! 

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8-1  長野、上田とくれば信州蕎麦!! 有名で、美味しいお蕎麦屋さん(ただし量は多い!!)で、お蕎麦を堪能。 お蕎麦も美味しいし、胡桃のたれも絶品! 季節のきのこの天ぷらまでいただきました。  ちゃんと事前に「多いからね。 普通盛りは、大盛りと思ったほうがいいから、小さいのにしといたら安心よ。」と伝えましたが・・・ 「折角来たんだから・・・どんなものか見とかなきゃ!」と普通盛を頼んだ人たち・・・ みんなの顔の変化が、見てて面白かったですよ!!

さて、重たいお腹を抱えながら、いよいよ本当の目的地です。今回は「上田紬」を勉強しにやってきたんです。 

上田紬は地方問屋と呼ばれるものも無く、こうでなければ上田紬とは呼べないというくくりもありません。 上田の土地で作られたものの総称が「上田紬」 なので、作り手によって、全く違ったものが出来上がります。 

以前、個人的にお手伝いに行った先で、出合ってしまったんです。 着る人に透明感を与える着物・・・ 一見何気ないんですが、時間が経てば経つほど気になるんです・・・ 何だかとっても素敵!? ひょっとして、すごくいいんじゃない!? 何だかとっても惹かれるんですけど・・・ はっきり言って危険です!! 

その作り手は・・・小山憲市さんといわれます。 素朴で暖かく優しい・・・ 彼は言います「着た人がより美しく、魅力的に見えるようなもの。 着物はあくまで脇役です。 着ている人が主役。主役を引き立てる物を作りたい・・・衣装なんですから」 納得の着物たちです。

そして何より驚くのが、糸を選び、面白い糸を作るところから、精錬、染料集め、染料つくり、糸染め、糸巻き、機への糸の成形、機織・・・全ての作業を一人でやってしまうことです。 そして、彼の頭の中の設計図に向けて、様々なもの、技法を駆使します。 天然染料も、科学染料も、手機も、機械ばたも・・・ 

92-1 93-1糸の種類だけでも40種類 昔は味のある糸がたくさんあったけれど、今は綺麗な糸ばっかりで・・・ 糸やさんと相談して、糸のよりの回転数や、糸の組み合わせを考えて、糸を作るそうです。

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そして、目の前で実際に糸を染める作業を見せていただきました。

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糸の染まっていく様子は圧巻でした。 

018-1 勿論、体験もさせていただきました。 暑いし重いし重労働!

027-1 029-1 染料からあがると、すでに糸の質によって色が少しづつ違います。 染料によって、色が入る温度も違い、必要以上すると「にごり」が出てくるそうです。 

76-1 77-1 78-1色を発色させ、又定着させる為の媒染剤(酢酸アルミニュウム・酢酸銅・木酢酸鉄)

034-1 それぞれ目指す色を発色させる媒染液の中へ糸入れて、丁寧に浸します。 少しずつ、でも確実に色が変化してゆきます。 

81-1 しばらく放置。その間に他の説明を聞いたのですが、出てきてみると・・・驚くほどの違いが!!

82-1 何度か、染と媒染の工程を繰り返して、のりを付け、天日干しされた糸・・・次の日のお昼に再びお邪魔した時には、同じ胡桃の染液で染めた糸が、全く違う色の糸になっていました。 ちょっと金属の匂いもしましたね。 

ただ、驚くのは・・・この糸質で、この色の糸が欲しい!と頭の中ですでに出来上がっているということです。 小山さんの着物には、経糸に50色の色が含まれていることは珍しくありません。 その上、糸の種類もそこにプラスです。 そして、その組み合わせた経糸と横糸のくみあわせで、どんな色の着物になるのか、想像がついている。。。と言うか、本人曰く、「作りたい着物の色柄があって、その設計図が無ければ物作りは出来ないでしょ!」と言われますが、、、凡人の私には「ありえない!」と思います。50色の糸が並んでどんな発色になるのか想像できますか?普通は想像できませんよね。

思い通りの色が出るまで、何度でも染め直します! 天気のいい日の日陰でないと、本当の色はわからないそうです。 職人ってほんとに凄い!!

040-1 部屋の中には、美しい紫色の糸が、自動織機にかかっていました。 実は、誰もが知っているある有名な女優さんの注文されたお着物です。 そう、物によっては、手機ではなく機械の機も使用します。 機械は一定の力で織り進むので、織り段等が付きにくいのです。 頭の中にあるイメージを現実にするために、一番いい方法を用います。 この着物は、夏物でした。 離れると一色に見えますが、沢山の色、複数の糸の種類が使われていました。 「糸のふしによって出来る影までがデザインです。」といわれてる以上、全て計算されています。 

045-1 047-1 着物の設計図や、堅牢度の試験結果など、普段私達が決して見ることの無い資料も見せていただきました。 以前お邪魔した時に私は、「染めの設計図」を見せていただいたんですが・・・ その時初めて、染って科学なんだ!!と気付きました。 数字と化学式の羅列だったんです。 当たり前と言えば当たり前だけど・・・思いもよらなかった・・・ 多くのことに気付かされます。 

069-1 071-1 064-1私はここで教えてもらって、やっと経糸の成形が理解できました。 ぼんやりしていたものが、ちゃんとつながり、姿が見えたって感じです。

 075-1 080-1 そして、手機の機織・・・しっかり体験しちゃってます!! 

そして、最後にどうしても見たかったものがありました。

51-1 54-1 55-1 今回も染料として使われていた胡桃。 胡桃の木って見たことが無い!! 上田の胡桃は栽培されている胡桃です。「鬼胡桃」といい、大きな実でした。 岡山でも、蒜山にあるんですが、木の形も、葉っぱの形も、実の付き方も全く違いました。

内容の濃い二日間でしたね!!  勿論今年の観月会 彩匠恒例の「秋の夜長の観賞会」にて、報告勉強会を開催します。 毎年、体育の日に開催。今年は10月14日月曜日 新渓園(大原美術館本館裏)にて、16:00開場です。 興味のある方は、どうぞ遊びにいらしてください。 当日は小山憲市さんの非売品の思いのこもった作品の展示もあります。 

そうそう、今回は素敵なお宿に泊めていただいたので、写真を少し!! 

10-1 11-1 12-1別所温泉の一番の老舗のお宿・・・しかも露天風呂つきのお部屋でした!! 館内には、なんと小山さんの作品が、沢山かけられていました・・凄い!!

15-1皆めいめい好きなゆかたを選んで・・・楽しそう!! 

今回は、本当に沢山の周りの方々の手を借りて、この旅行が実現しました。 レンタカーを手配してくれた友人、本当に凄いお宿を手配してくださった方、また、暖かく迎えてくださった旅館の女将さん 有難うございました。 そして、行き返りずっと一人で、慣れない大きな車を運転してくれた蔭山先生、本当に有難うございました。 何より、お仕事の手を止め、私達のために、わかりやすく様々な事を、惜しげもなく教えていただいた小山さんに本当に感謝します。 奥様も本当に有難うございました。 こうしてみると、彩匠と言う学院は本当に恵まれているんだなあ・・・と心底感じてなりません。 今回学んだこと、自分で留めることなく周囲に伝えていけたらいいですね。 本当の技術を持った職人さんを一人でも多く残し、技術の継承をしていただく・・・ その為に自分には何が出来るのか・・・ 人より多く与えてもらっている人には、人より多くしなければならない事があると思います。 一緒に頑張りましょう