行ってきました。牛首紬・加藤改石さんの元へ・・・

  

9月6日(木曜日)

こんばんわ 朝晩少し涼しくなって、過ごしやすくなりましたね。 やっと少しホッとした感じですが・・・ 

先日彩匠では、昨年計画したものの、台風に邪魔されて断念した「牛首紬」、加藤改石さんの元へ行ってきました! そう牛首紬といえば、石川県です。 移動は車・・・そう片道5時間以上の長い道のりです。 学院長と私を入れて総勢5名プラス運転手! 本当は全員に声をかけたいのですが・・・ なかなかそうもいかず、今回は「先生、牛首紬いつ行けますか?」と熱いエールを送り続けてくれた方を優先で、声をかけて、出かけてきました。 (今回行けなかった人・・・ごめんね。 又、機会は作りますからね。)

朝5時半集合でのスタートでしたが、楽しく車は進みました。 ( まあ途中何も無かったわけではありませんが・・・ ほぼ順調!予定どうりでしたね。)

まずは何より改石さんの元へ・・・ 加藤機業場へ。 

「いらっしゃい!」「遠くからよく来たね。」と笑顔で迎えてくれた、91歳の改石さん (私は昨年一度お邪魔してるのですが・・・昨年より元気そうで、嬉しくなっちゃいました。」 「お世話になります」なんて、挨拶している足元にあったのは・・・

 そう、お蚕さんのさなぎ。 繭から取り出されたものです。 昔は食べたそうです。

そして、一歩中に入ると・・・ 

  座繰りです!! 写真で見る姿が目の前に・・・ やっぱり「匂い」は気にならない・・・ 散々後で皆で話したのですが・・・「確かに匂いはあった。けど別に嫌な匂いではなく、特に気にならない。」と女性は皆口を揃えますが、男性は、「堪えられなくて、どんなに頑張っても、5分はいられない。」と言います。 これはたまたまなのか、どうなんでしょう?

 牛首に使う糸は玉繭です。少し大きい・・・ 83度の温度で糸がほぐれてきます。

   一皮剥く。勿体無いけど、最初のほうの糸はやっぱり硬いそうです。 う~ん勿体無い。

   繭から出てきたお蚕さん。 ちょっと可愛そう。 ありがとね。。。

  ほぐれてきた糸を木のヘラですくいます。 この木にも良し悪しがあるそうですよ。

 見えるかな。約80本の糸が引かれて、一本になります。 この80本って職人さんの感覚です。 大きな節が上がることも、綺麗に整えて糸の太さをそろえます。逆に糸が細くなってきたら、さっと糸を足してゆきます。 人間の感覚ってすごいですよ!! 大体83度のお湯に手を入れての作業ってだけでホントにすごい!! 更に、改石さんのところは、二階で今作っている糸を使って機織をしています。 だから・・・糸が悪いと、機織の機の音がリズミカルに進みません・・・ 自分のした結果が、もろに伝わってきます。それって、結構ハードですよね。。。 やりがいがあるとも言えますが・・・

 糸が見えますか? 糸にうねりがあるんです。 これが大切!! この糸のうねりは、お蚕さんが糸を吐いたときに出来るうねりです。 簡単に言えば・・・息継ぎした時に出来る! このうねりが空気を含み、光沢になり・・・牛首紬の命です。

  そして、今回一番その大切さを学んだ糸を「精錬」する為の釜です。 改石さんのところでは、石鹸を使っての「中性還元精錬」です。 中性還元精錬にて、豊かなセリシンを最大限にいかし、染料の含有量を増やし、光沢の豊かさ、発色の良さを持つ糸に仕上がります。 精錬がそんなに大切な工程だったなんて知りませんでした。 ちょっと科学のお勉強みたいで難しかったですが・・・この精錬の出来上がりの感覚も、改石さんの長年の勘です。 う~ん すごいよ!!

 「はたき」という重労働を終えて、出来上がった糸です。 本当にわが子をいつくしむ様に、満面の笑顔で「この糸です。触ってみなさい!!」と改石さんが見せてくれました。 空気を含んだ、うねりのある優しい糸です。

 いよいよ機織です。 縦糸には単繭からとられた糸を用い、横糸には玉繭からとられた糸を用いて織られて行きます。 撚りのかかっていない糸の強度を補う為、他のものよりも強い打ち込みがされています。強い打ち込みをかなえる為に、筬におもしが付けられています・・・だから機織の音はとても大きく力強い音です。 別名「釘抜き紬」とも言われる非常に強い生地が織られてゆく姿は圧巻でした。 横糸に用いる玉繭の節が無地の着物に味を加えてゆきます、が、節が強すぎると即、機を止め、糸を変えてゆきます。織り手の細やかな配慮と、豊かな経験に基づく優れた感覚を持ってして、牛首紬の品質が保たれているのだと、ひしひしと感じました。 牛首紬が他の多くの紬と違うのは「後染め」という点です。 でも機織を見ていてよーくわかりました。 これだけ機を織りながら細やかに気を使う点があるのに、その上絣あわせや柄あわせは無理です。 ここまでは、より軽く、光沢があり、紬本来の美しさを存分に引き出され、なおかつ何よりも強い反物を作り出すことに、全精力を傾けているのだと・・・ ここから先は、牛首紬本来の良さを活かした染めの技術が加わり、更に素晴らしい牛首紬が出来上ります。 職人さん一人一人の真剣なまなざしと共に、楽しそうにお仕事をしている姿に感動しました。 この着物を身にまとえるとしたら・・・ なんて幸せ・・・ 

めちゃめちゃ感動したら・・・ お腹が減りました。

   

ありがたいことに、ちゃんと郷土料理のお昼ご飯を用意してくださっていて・・・ 囲炉裏端で、みんなの顔を見ながら食べるお食事の美味しいこと。 名物の「固豆腐」、縄で縛って持ち歩けるほど固いんです。 保存食ですね。 勿論いただく時は柔らかい・・・とっても甘かったですよ。 あまごの甘露煮。私本当はお魚苦手なんですが・・・ 頭から尻尾まで綺麗に食べれちゃいました!! 他にもお蕎麦や栃の実の御餅など、お腹いっぱいでした。 幸せ・・・

   食事の後は・・・ なんと私達の為だけに、それも改石さんのお宅に、作品を陳列していただき、今度は染めのお話なども聞きながら堪能です。 写真なんかとっている暇はありませんでした・・・(ごめんなさい) 沢山勉強して、少し最初は遠慮していたものの、それぞれ好きなものをあててみて・・・楽しい時間を過ごしました。 お蚕さんを育てている人、繭から糸をひいている人、機を織っている人、染めている人それぞれの職人さんの顔をわかる作品てなかなか無いですよね。 う~ん本当に沢山学び沢山感動した一日でしたね。 

勿論夜は、温泉を堪能・・・ 次の日は永平寺や東尋坊など、なかなかいけないところを観光して帰ってきました。 美味しいものもいっぱい食べて、いっぱいお土産を買って!! 旅行を満喫した二日間でした。 

今回も本当に沢山の方々にお世話になりました。 改石さんをはじめ加藤機業所の皆さん。散々お仕事の邪魔をしたにも関わらず、丁寧に教えていただき有難うございました。 少し他の方とは違う科学的な観点から沢山のことを教えていただき、今回沢山段取りをしてくださった大門屋さんの高橋社長いつも有難うございます。 お忙しいのにわがままを聞いてくださり本当に有難うございました。 また、間をいつも取り持ってくださり、しんどいことをいつも率先してしてくださる佐藤常務 感謝しています。 そして、一番しんどい運転を二日間ずっと一人でしてくださり、細やかに気遣いをしてくださる蔭山先生 有難うございました。 沢山の知識と感動を自分だけでとめることの無いよう、日々過ごしてゆきたいと思います。 行きたくても今回行けなかった皆さんに、ちゃんとお伝えできるよう・・・安心してください。 彩匠恒例の「秋の夜長の観賞会」で皆さんにも勉強していただこうと思います。 その時には、数は少なくても(無理にお願いしてきましたから!)ちゃんと素晴らしい牛首紬も見ていただけると思います。 楽しみにしててくださいね。