雪ざらし in新潟

 

3月23日(水曜日)

こんにちわ 被災地では、どんな天気なんでしょう。お昼間だけでも少しでも暖かいと良いのに・・・ 少しは物資がお手元に届いているのだろうか・・・ 今は自分に出来る精一杯をしながら、日々を重ねてゆくしかないんですよね。

実は丁度地震の一週間前の3月4日~6日 二泊三日で、新潟に行ってきました。 5日に今年の雪ざらしの勉強体験会があって、縁を伝って声をかけていただきました。 正直岡山から新潟は遠い・・・でも一生に一度あるかないかのチャンスだから!と考えて、思い切って参加。 生徒さん二人と、学院長と私で出かけてきました。

当日は始発の新幹線で新大阪まで行き、いつもお世話になっているK先生の車に乗り込みいざ新潟へ・・・10時間を覚悟の車中です。 道中山を越えるたびにくるくる変わるお天気に一喜一憂しながら車窓からの景色を楽しみながらの旅でした。

   雪さらしの会場は一面雪原でした。

  反物は水に浸されてスタンバイ

 雪ざらしのプロから説明 この場合のプロとは、移動のタイミング、さらす時間等を見極めることの出来る方です。 毎日同じ天気な訳も無く、刻々と変わる天気を先読みしながら、一週間から十日かけて雪ざらしを完了させなければなりません。 まさに経験と勘です。

ちなみに雪ざらしとは、雪の上に反物を広げます。 太陽の熱で溶けた雪が水蒸気となり、そのとき同時に発生するオゾンによって、反物が漂白されるんです。 黄ばみは驚くほど真っ白になり、天然染料は鮮やかに発色するんです。 「反物の里帰り」という言葉があって、古くなって黄ばんだものを雪ざらしすることで、新品同様に綺麗になります。 ただし、科学染料は・・・色が漂白されて真っ白になってしまいます。 

             

協会の方々が、実演をして見せてくださった後、いよいよ体験です。 二人ペアで、反物の端を持ち、手前の反物に当たらないように持ち上げて、移動です。 濡れた反物は、思った以上に重たく、当然冷たい。 隣の反物と10センチほど間を取って、置くのですが、きちんと雪面にくっつくように置かないと、浮いたところは乾いてしまい、漂白にむらが出来てしまいます。 お互いにしっかり握って、反物を引き合い出来るだけシワを伸ばしてから雪の上に降ろします。

 いつもの事ながら、最初から、最後までいて、沢山のことを直接お聞きしました。 穏やかにニコニコと雪ざらしのプロ「ことうさん」はお話してくださいました。 お陰で、今までぼんやりしていた雪ざらしが、はっきりと理解できたような気がします。 ただし悲しいこともお聞きしました・・・ ことうさんには跡継ぎがいません。 「今現在、越後上布織物協会のメンバーが一緒に雪ざらしをしているので、何とかなるでしょう」 とは言われましたが、ここでも・・・ 

越後上布は昭和30年重要無形文化財に指定されています。 それには五つの要件があり、その中の一つに「雪さらし」があります。 更に2009年9月にはユネスコの無形文化遺産に登録をされてもいます。 今や日本だけでなく、世界の文化遺産なのに・・・実情はどこも同じ・・・担い手がいない、食べてゆけないのに文化の継承をしろとは当然誰も言えません・・・ どうしたらいいんでしょう。 いつも素晴らしい技術に出会った後必ず陥るジレンマに今回も陥っています。 

ご一緒した生徒さんお二人も、「やっぱり実際に見て、経験するのは全然違う」「百聞は一見にしかずとは本当にこの事ですね」と興奮気味でした。 本当に良い経験をさせていただきました。 私たち個人ではなかなか実現は難しい内容でしたが、今回も多くの方々の善意と協力によって、実現することが出来ました。 本当に有難うございました。  今回の経験は参加者だけのものにならないように、教室の皆にもちゃんと還元できるよう考えています。 そのときまでお楽しみに!!